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山猿

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THIS IS BOXING

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「WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ」(2010年10月24日@両国国技館)
王者:西岡利晃(日本)○判定●同級1位:レンドール・ムンロー(英国)

文句のつけどころがないほどの西岡の完璧な勝利。個人的にはこの内容での12ラウンズは単純なKO決着より爽快だ。同じく国技館の2階席で観た96年4月27日の「WBC世界Jバンタム級戦」川島郭志VSセシリオ・エスピノを思い起こすような指名挑戦者に対する判定完封劇。ジャッジは揃って119対109。おれの採点では西岡のフルマークだが、強いて挑戦者にポイントを振るなら4回だけ。

「God Save the Queen」が奏でられた国技館。JBC管轄下の世界戦(女子は除外)では75年2月27日、東京体育館での「WBC世界ライト級戦」ガッツ石松VSケン・ブキャンナン以来、35年ぶり5度目の「日英対決」。“2 Tone”ムンローを迎えて西岡の5度目の防衛戦。世界戦らしい緊張感が漂う。

西岡は世界戦10試合目にして初めてサウスポーと対戦。戦前に本人が言っていたようにサウスポーは得意なのだろう。何の違和感もなく戦っていた。正当派のサウスポーである西岡は、左構え相手なら右ジャブも活きるし、左ストレートも直線上に打ち抜ける。そう、98年12月29日、大阪市中央体育館での辰吉VSウィラポンのセミファイナルで渡辺純一(楠三好)を2回で沈めたように。

オーソドックスとの対戦ではそれほど目立つことのない右リードの巧さが光った。反時計回りを基本に単発のジャブを当てにいく。ムンローもリードパンチを使える選手なので、ペース争いで劣勢に立たされる経験は少なかっただろうが、右の差し合いで優劣がはっきりした。西岡は前提として相手のパンチを喰らわない距離を保ちながら、リズムをつくり、攻撃に転じる。流れるような攻防一体のボクシング。空間を把握しているので被弾もない。
左ストレートの打ち出しが開き気味で伸びないムンローは中間距離では勝負にならないため、距離を詰めて連打に出るしかないのだが、プレスをかけようにも攻撃の起点を見出せない。ガードは堅いが、打たれる時は防御に徹し、カウンターを取ってこないことも西岡には戦いやすかったはず。初防衛戦でのヘナロ・ガルシア(メキシコ)戦では突進してくる相手をさかんに右手を伸ばしてコントロールしていた西岡だが、今回はジャブとフットワークでファイターを制圧した。

そしてボディ攻撃。
ムンローは顔面のガードが堅く、驚くほどタフだった。回復も早い。距離が詰まることを嫌ったのか、それとも左拳の負傷のためか、西岡は左ストレートはあまり深く打っていなかったが、それでも何度かまともに入っている。ここで西岡が見事なのが、顔面ばかりを狙うのではなく、あの筋肉の鎧のようなボディを迷うことなく打っていったこと。左対左なのでレバーは当たり難いが、相手が右パンチを打つ際に叩き込むストマックへの右アッパー、相手の右肘の外から左フックで狙う側面打ちでダメージを与えた。
あれだけボディを効かされれば普通なら攻め落とされているし、顔面を守っていたガードが落ちているので顎を打ち抜かれてジ・エンドのパターンなのにダウンすら拒んだことはムンローを褒めるしかない。世界1位の意地は十分見せた。

ムンローは戦い方もフェアで、試合後の態度も立派なグッドファイターだった。勝者を讃えてから四方に挨拶してリングを降りる際にコーナーポストを殴っているのが2階席からでもわかったけど、泣いていたんだね。再起を表明しているので、がんばってほしいと思う。入場やコスチュームや応援もかっこよかった。陣営の「ただの王者に負けたのではなく、本物の王者に負けた」というコメントは近年の日本ボクシング界における最高級の賛辞。日本人として誇らしさを覚えるような一戦だった。

WOWOWのマニアックな中継がうまい具合に試合のすばらしさを伝えていたと思う。日テレの低質な実況ではこうはいかない。個人的には西岡の試合は今後もWOWOWで構わないのだが、そうなると一般層の目に触れることがなくなるのでどちらが良いのか難しいところ。
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by the_leaping_hare | 2010-10-30 08:29 | Box
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