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山猿

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No Country for Old Men

e0042386_3112538.jpg『ノーカントリー』(2007米国)監督:ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン

なるほど,コーエン兄弟がアカデミー賞を受賞するというのはこういうことか。緊張感溢れるサスペンスの中に気の利いた台詞やユーモアがふんだんに鏤められたお得意のスタイル。それこそコーエン兄弟がデビュー以来,ずっと描いてきた映画と何ら変わりないのだが,今作はアメリカという国の病根をテーマにしている。物語の始まりと終わりに用意されたトミー・リー・ジョーンズの独白。時代に取り残された者の諦念がそれを象徴する。

1980年代テキサスを舞台にした不条理劇。ベトナム帰りの元溶接工(ジョシュ・ブローリン)は狩りの最中に,ギャングの麻薬取引が決裂した場に偶然遭遇し,そこにあった200万ドルを持ち逃げする。それを追うやたらと行動規範にこだわる雇われ殺し屋(ハビエル・バルデム),そしてこの事件を捜査する老保安官(トミー・リー・ジョーンズ)の三人の物語。追う者と追われる者。短絡的に求める快楽と,唐突に訪れる死。麻薬がもたらす惨劇,目の前に現れた大金を何の疑いもなく持ち逃げする神経,あまりに簡単に殺人ができてしまう社会,どれだけ注意していてもコインの裏表どちらが出るかで決まってしまうという偶然性に支配された人生…この映画で展開される不条理は,“現代”のアメリカそのものだ。

『夜になるまえに』で主演したハビエル・バルデムの怪演(アカデミー賞助演男優賞受賞)に食われてしまうが,役者は総じて好演。度肝を抜く殺戮シーンもあれば,描写は一切ないままに殺人を想起させるような演出も冴えている。原作はコーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」。邦題の『ノーカントリー』じゃなんのこっちゃさっぱりわからんが,原題がこの映画が提示していることすべてを表している。
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by the_leaping_hare | 2008-03-26 04:01 | Movie
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