ブログトップ

山猿

cdghare.exblog.jp

Plainview

e0042386_23212568.jpg『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007米国) 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 主演:ダニエル・デイ・ルイス 撮影:ロバート・エルスウィット 音楽:ジョニー・グリーンウッド

ある石油屋の一代記を通じて人間の欲望と孤独を禍々しいまでに描いた力作。158分という長尺であり,適度にエピソードを運んでくる脇役の存在に必要以上に気を取られていると訳のわからない状態になりかねないので,とにかくダニエル・デイ・ルイス演じる主人公の石油屋ダニエル・プレインヴューに目を向けたい。

前作『パンチドランク・ラブ』は最悪だったポール・トーマス・アンダーソンが,これまでになく直球主体に力強く物語を描き,故ロバート・アルトマン監督に献辞を捧げている。その演出もさることながら,ダニエル・デイ・ルイスの存在なしには語れない作品。冒頭,1898年のカリフォルニア。金脈を探していた採掘者が石油を掘りあて,野心に火がつく。胡散臭い山師が石油という魔物に取り憑かれ,冷酷な実業家として成り上がる姿を生々しく演じている。
かつて夢を描いた人間がいざ夢を実現させた時,達成感こそあれ空虚な現実に包まれて孤独を覚えるというのも人間のひとつの宿命であろう。他人を平気で蹴落として成功への道を駆け上がるプレインヴューも富と名誉を掴んだ時,愛に飢えた状況に陥る。しかしプレインヴュー本人にそのような自覚は一切ない。だから彼は,他人や宗教を利用することはあっても,信じることは絶対にない。常に一人の人間だけをビジネスパートナーとして自分のそばに置き,目的を果たすためには手段は問わず,知人を罵り,切り捨てる。首尾一貫して変わらない人生の価値観においては反省などするわけもなく,孤独を感じる理由もない。こうしたプレインヴューの生き方に現代アメリカを重ねることは当然できる。最終的に彼は,神の名を語る偽善的な宣教師を通して神にも戦いを挑む。

そこにブラッドが流れる。血縁というものを手に入れることのできなかった男の目の前に広がる血。夢見る者の成り上がり物語でもなければ,欲に目がくらんだ者に罰が下される物語でもない。痛快かつ不気味。レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドによる確信犯的な不協和音もこの映画にはよく合っている。
[PR]
by the_leaping_hare | 2008-05-30 06:00 | Movie
<< 第1章,降臨 プーケット >>