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山猿

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Who is the BEST?内藤×清水

e0042386_6103195.jpg「WBC世界フライ級タイトルマッチ」(2008年7月30日・国立代々木第一体育館)
王者・内藤大助(宮田)○KO 10回57秒●挑戦者13位・清水智信(金子)

まるでそれまでの不出来がその結末を彩るために用意されていたのかと錯覚するほどの逆転ノックアウトに,内藤大助の持つ得体の知れぬ“凄み”を見た気がします。

完全に負けパターンに陥っていた。4回終了時,この試合初めて公開された途中採点では,ジャッジ2人がドロー,1人は2ポイント差で挑戦者・清水を支持。これを受けて内藤は大幅な戦術変更とはいかないものの,よりポイントを挙げることを意識したスタイルに移行する。それまで通りロングフックを右から左,またはその逆に繋ぐ二連発のコンビネーション中心の攻撃だが,よりパンチを強め,より攻撃的な姿勢を見せることで中盤の4ラウンドを戦う。しかし有効打は少なく8回終了時には1人のジャッジがドロー,残る2人はそれぞれ1差,2差と清水のリードは広がっていた。
二度目の世界挑戦となる清水は,序盤4回を被弾のリスクを消すことに徹した。一発目と二発目のヒッティングポイントが大きく異なる内藤独特の広角に打つフックを研究しており,徹底して射程圏外となる縦に長い距離に身を置く。距離が縮まる右パンチは自分からは絶対に出さない。無難に4回を乗り切った直後の採点で,その戦術でもポイント勝負ができる見通しが立つと,続く4ラウンズも内藤の二発目のフックを貰わない距離をキープし,インサイドからコンパクトなストレートパンチを合わせていく。そして8回終了時の採点では,勝利への手応えを掴んだ。

9回。ペースを変える必要に迫られた内藤だったが,策なくポイントを失う。相変わらずフックばかりを振り,清水のストレートを貰う。これは挑戦者の術中に嵌ったというより,もはや自滅だ。内藤の変則スタイルとは,前王者ポンサクレック・ウォンジョンカム(タイ)を攻略するために築き上げられたもの。打ち出しのタイミングを意図的に遅らせることでフックを死角からのパンチに見せ,正統派サウスポーの“絶対王者”に揺さぶりをかけた。しかし打ち合いの距離に入ってこない清水には,このような攻撃は有効ではない。

鋭い踏み込み,硬質の右ストレートを持つ内藤が“正攻法”を採らなかったことに今回の苦戦の要因はある。しかし王者は,敗色濃厚となった試合に,作戦ミスともいえるスタイルを貫き通すことで“おとしまえ”をつけた。それは同時に劇的な結末を生んだ。
10回開始間もなく,右ストレートをミスした直後のこと。顎を完璧に捕らえ,挑戦者の体を硬直させた返しの左フック。この一発で勝負を決めた。二度のダウンを重ねてベルトを守った。

愚直なまでにフックを打ち続けた王者と,積極性が足りないという批判も承知の上でアウトボクシングに徹した挑戦者。両者が自分の信じたボクシングを貫くことで導かれた衝撃の結末。その後の珍入者は余計でしたが,ボクシングの醍醐味と怖さを同時に示した好勝負でした。
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by the_leaping_hare | 2008-08-06 07:15 | Box
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