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山猿

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クライマーズ・ハイ

e0042386_204770.jpg『クライマーズ・ハイ』(2008 日本)監督:原田眞人 原作:横山秀夫『クライマーズ・ハイ』

1985年8月12日,羽田発伊丹行きの日本航空123便が群馬県上野村に墜落した日航機墜落事故を当時,上毛新聞の記者として取材した横山秀夫が自身の体験をベースに書いた同名小説の映画版。なお,2005年にはNHKでドラマ化されているが,おれは未見。
事故の詳細記録や検証ものではなく,突如舞い込んだ大事故に対して修羅場と化す架空の地方新聞社・北関東新聞社を舞台に,携帯電話もパソコンもない,今より遥かに新聞に存在価値があった時代に生きた記者たちの己の仕事に対する誇りと,世界を揺るがす事象に遭遇し翻弄される人間模様が展開される。03年の刊行当時に原作を読んだおれは,会社員としての日々が浅かったこともあり,いたく感動し,組織に属して働くことの喜びや自分の会社に対するささやかな希望みたいなものも見出してみたりもした。

そこで今回の映画化作品だが,監督が原田眞人ということもあり,『金融腐食列島(呪縛)』や『突入せよ!あさま山荘事件』に連なる日本の組織社会ものと考えていい。前二作と同じように男ばかりが出てきて喧々囂々言い合う映画である。大まかな枠組としては『金融腐食列島』の都市銀行が地方新聞社に舞台を変え,役所広司が堤真一,椎名桔平が堺雅人,仲代達矢が山﨑努になったということですわ。
原作以上のものはそもそも期待していなかったので,おもしろく観ることができました。総じて好演といえる役者の中にあって,得に最高なのが編集局次長役の螢雪次朗と社会部長役の遠藤憲一の編集局ナンバー2&3コンビ。北関東新聞社の歴史の中で最大の事件であった「大久保清連続殺人事件」,「連合赤軍事件」を取材したというプライドだけで地位を掴み,生き残ってきた編集局幹部をこのふたりが気合を入れてまじめに演じる。自分たちの“戦歴”を上回る大事故を取材する部下のことがおもしろくなく,時に露骨に,時に陰湿に嫌がらせをする上司を妙なテンションで熱演。遠藤憲一みたいなのが部長では会社が潰れるだろうがとかいう指摘はともかく,とにかく笑えるし,締めるところはしっかり締めてきます。あと,舞台が前橋なので政治部デスク役の田口トモロヲの最大の見せ場で,競輪の話題が出る。紅一点,尾野真千子はおれの嫌いな河瀬直美の映画によく出てくる役者ですが,あまり印象に残らないし,女性記者を登場させる必要性も感じない。
それで,おれがこの映画の何が不満なのかというと,原作を捩じ曲げてまで「父と息子」というテーマを強調していること。原作には親子関係以上に,
Q:「なぜ山に登るのか?」
A:「下りるために登るんさ」
という重要なテーマがあったはずなのに,これはスルーして陳腐なエピソードを挿入することに納得いかなかった。あと,「セクハラ」って言葉はさすがに当時はないですよね。

当時の自分を振り返ってみると,1985年8月当時,小学生だったおれは,この事故の起きる数日前に母親とともに飛行機に乗り,東京へ行った。生まれて初めて乗った飛行機は今は亡き東亜国内航空。東京ディズニーランド,つくば科学万博,上野動物園でのパンダ,多摩動物公園でのコアラ,当時はまだ阪神ファンだったので後楽園球場での巨人×阪神戦などを観てまわる旅行の最中にこの事故が起きた。仕事の関係で遅れて合流する父親が事故翌日に飛行機で上京してくるのを待つのに子供ながらに不吉に思い,帰りの飛行機にも乗りたくなかった憶えがある。それだけに日航ジャンボ機墜落事故はおれの中ではかなり初期の“社会的記憶”となっています。その影響ではないですが,今でも東京・大阪間の空路は使いませんね。
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by the_leaping_hare | 2008-08-08 03:45 | Movie
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