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山猿

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トリプル世界戦・その1 互角

e0042386_20545255.jpg「WBA世界Sフライ級王座決定戦」(9月15日・パシフィコ横浜)
同級1位:名城信男(六島)○判定2−1●同級3位:河野公平(ワタナベ)

史上初となる日本選手同士による世界タイトル決定戦。どちらが勝っても日本に世界王座がひとつ増えることに変わりなく,世界戦特有の緊張感を欠くため,あまり歓迎したくはありません。ただ,両者は元王者の名城がランキング1位,河野も前王者のアレクサンデル・ムニョス(ベネズエラ)が陥落後に2位となったため3位に落ちてしまったが,それまでは2位だったので,1位と2位で王座決定戦を行うという本来の在り方は実践しています。「こんなの世界戦じゃねえ」と文句を言うつもりもありません。

試合は世界戦としての技術レベルはもうひとつ。有効打がなさ過ぎたというのがその理由ですが,両選手の実力が拮抗していたという点では好勝負ともいえます。体をくっつけての消耗戦がフルラウンド続き,判定は島川(東日本)が115−114で河野,原田(西日本)とポートゥレイ(米国)が115−114で名城。三者とも1ポイント差のスプリット,合計ポイントでも1ポイント差という最小ポイント差で名城が王者に返り咲きました。
採点基準のどこに重きを置いても,どちらの勝ちでもいいような互角の勝負。はっきり言って,勝敗は好みの問題です。おれは,描いていたボクシングをまったくできなかった名城よりも狙い通りのボクシングをやり通した河野が若干有利かなという印象を持ちました。東日本,西日本,米国(中立国)というジャッジ構成は名城に有利に働いたと思います。これが東日本二人,もしくは中立国が手数の出るファイターを好む韓国人などであれば逆の結果になっていたのではないでしょうか。

大別すれば,右のファイターに区分される両者ですが,積極性では河野が上回る。開始と同時に前屈してガードを固めた窮屈な姿勢のまま前進してひたすら手を出す。ダメージを与えようとするパンチではなく,手数で相手の反撃を封じ,一方的に押し込むスタイル。名城はマーティン・カスティージョ(メキシコ)の左目上を切り裂いた硬質の右ストレートで反撃を試みる。距離が開くと,攻め手のない河野に対し,一発で相手を沈めることもできる名城が明らかに有利。しかし名城も,河野の前進,手数を止めるだけの技術はなく,試合は早々と乱戦となった。
流れが大きく変わったのが10回。名城が使い始めた右アッパーがヒットする。決して温存していたわけではなく,どちらかと言えば苦し紛れに出したこのパンチに河野はまったく対応できず,悉く被弾する。ブロッキングやパーリングで応じることができないため,アッパーを食いやすい前屈みの姿勢を正すことで凌ぐしかなかった。これが河野の持ち味を半減させた。終盤の勝負どころ,痛恨の失点だった。

新王者の名城もこのままでは防衛は難しいでしょう。右ストレートは悪くありませんが,左ジャブがあまりに貧弱なため,右が活きてこない。ファイター型と戦う時の接近戦での体勢の作り方にも課題があります。
現状で持てるものを出し尽くして勝てなかった河野はポイントを取るための術を身につけなければ世界戦では勝てない。WBA世界フライ級王者・坂田健史(協栄)のようなショート連打が欲しいですね。なお,戦前,使用グローブで両陣営がもめていましたが,どちらを使っていても試合内容には違いは生じていなかったでしょう。

このタイトルについて少々触れておく必要があります。昨年5月3日に当時王者の名城がムニョスに判定負けして王座陥落。ムニョスは9月24日に相澤国之(三迫),08年1月14日に川嶋勝重を判定で下し,二度の防衛に成功後,5月17日にWBC同級王者のクリスチャン・ミハレス(メキシコ)との統一戦に臨み判定負け。タイトルを統一したミハレスは,WBAの悪しき慣例により,スーパーチャンピオンに格上げされ,王座は空位となりました。それを当時1位の名城と2位の河野で争うはずが,3位にランクされていたAJ・バナル(比国)陣営の横槍が入ります。日本サイドよりも先に決定戦を強行しようとして7位のラファエル・コンセプション(パナマ)との試合を組む。一度はこちらが王座決定戦とWBAに認められましたが,結局は暫定王座決定戦に。7月26日にセブ島で行われた試合では番狂わせが起こり,コンセプションが10回KO勝ち。暫定王者となりました。
そして名城と河野の“正規王者”決定戦が行われた9月15日,メキシコシティでコンセプションは元WBC世界二階級王者のホルヘ・アルセ(メキシコ)との初防衛戦を行い,9回TKO負けで陥落。つまり現在,WBAのSフライ級にはミハレス,名城,アルセという三人の世界王者が存在します。認定料ほしさにタイトル戦を乱発させるWBAの腐敗の象徴のような事態といえるでしょう。
名城には“真の王者”といえるような防衛ロードを強く望みたいところです。
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by the_leaping_hare | 2008-09-20 21:06 | Box
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