ブログトップ

山猿

cdghare.exblog.jp

王道

e0042386_3124870.jpg「WBA世界フライ級タイトルマッチ」(2008年12月31日・広島サンプラザホール)
王者:坂田健史(協栄)●KO2回2分55秒○挑戦者1位:デンカオセーン・シンワンチャー(タイ)

日本史上初の大晦日の世界戦にはあまりに悲劇的な結末が待っていました。自らのスタイルを確立した王者がキャリアのピークを迎えようとした地元凱旋試合。待ちに待った舞台で地獄に突き落とされるかのようなKO負け。V5失敗。僅か355秒,ワンパンチKOでの落城でした。

挑戦者の動きの良さが目立った初回を終えても,極端なスロースターターという坂田の特質を考えれば,深刻な結末は見えてこなかった。それはこれまで幾度も,たとえ顎を割られようとも,たとえ序盤に痛烈なダウンを喫しようとも,勝利を諦めず戦い抜いてきた坂田の姿に幻想を抱いてきたからでした。

07年11月4日,さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナから始まった両者の因縁は,初回に坂田の左ガードが下がったところに右ストレートを浴びてダウンするところから始まった。深刻なダメージを負ったわけではなかったが,前半は劣勢。しかし後半に入るとスタミナにものをいわせて猛反撃。左手親指を痛めたデンカオセーンの失速,最終回のホールディングの減点にも救われ,スプリット・ドローで辛くもV2に成功した。
デンカオセーンの自滅ともとれる初戦から判断すれば,再戦では坂田危うしとの展望を導き出すことも難しくなかった。しかし今回,おれは悪夢のような展開に陥ることはないだろうと,なぜか楽観的な思いを抱いていた。
それは今回のリマッチが前戦の延長線上にあるという錯覚を見たからであり,坂田が再戦に強いという根拠のないイメージを信じきっていたからだ。そう思わせるだけのファイトを坂田は毎試合続けてきた。

試合後に明かしているようにデンカオセーンが右クロスを狙っていることは初回から見え見えだった。しかしその丸解りの狙いを実践するため,挑戦者は強い左ジャブを積極的に飛ばし,右ストレートをボディに丁寧に散らした。初回1分40秒過ぎ,坂田の左ジャブの引き際に合わせて放ったデンカオセーンの右ストレートはフィニッシュとなったパンチより危険なタイミングで坂田の顔面を捕らえていた。
坂田にエンジンがかかり始め,打ち合いが展開されるようになった2回終盤,試合は唐突に終わる。右アッパーを空振りした坂田はそのまま左ボディにつなげる。ここに挑戦者の右フックが襲う。一瞬間を置き,大きく上体を揺らした坂田は膝から崩れるようにダウン。軽量級では滅多に見ることのできないディレイド・リアクション。初見ではテンプルへの被弾に思えた一撃だったが,VTRを見返すと左耳付近を捕らえている。三半規管が麻痺した坂田は立ち上がったものの,レフェリーはカウントアウト。貰った場所が悪かったともいえなくはないが,序盤から挑戦者が右クロスを再三狙っていたことを考えれば「ラッキーパンチ」の一言で片付けられる敗戦でもなかろう。前半戦を乗り切れば坂田にも勝機はあったと思うが,これは紛れもなく完敗である。

「これがボクシングですよ」
解説席の元WBA世界Sバンタム級王者・佐藤修氏の言葉にすべてが集約されていると思う。血の滲むような努力を積み重ねて築いた栄光でも決して永遠には続かない。一瞬にしてすべてが崩壊するリングの中はある意味,人生以上に現実的である。だからボクシングは美しい。勇敢な王者らしい散り際だったと思う。

しかしTBSよ。いくら2回で試合が終わったといえども,残り時間にK−1など流すかね。その神経が信じられんわ。
[PR]
by the_leaping_hare | 2009-01-08 05:00 | Box
<< Kamikaze2009 黒船 >>