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山猿

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Kamikaze2009

Kamikaze2009_e0042386_2564847.jpg「WBA世界ライト級タイトルマッチ」(2009年1月3日・パシフィコ横浜)
王者:小堀佑介(角海老宝石)●判定0−3○挑戦者1位:パウルス・モーゼス(ナミビア)

世界王者が未知の国からやってきた無敗の挑戦者と激突するという世界戦らしい緊迫感があり,試合自体はおもしろかったのですが,採点結果を聞くとなんとも勿体ない試合だったと思えて仕方ありません。現地観戦でのおれの採点では,小堀が取ったラウンドは2,5,最終回の3つ。完敗だと思った。おそらく小堀陣営も採点では劣勢だという判断だったのだろう。ポイントのピックアップを完全に無視した終盤の戦い方にも納得できるものがあった。
しかし出てみた採点では豪州人ジャッジこそ109−119というものだったが,残る二者は113−115。最終回を小堀が取っていれば0−1のマジョリティ・ドローで防衛だったと知ってみれば,悔やむに悔やみきれない陥落である。

昨年5月19日,ディファ有明での衝撃的な逆転KO劇で王座に就いた“The Nature Boy”小堀。早々と1位・“The Hitman”モーゼスの挑戦を受ける意向を表明するが,ドン・キングに握られた4つのオプションの買い取りに難航し,望まぬブランクをつくる。一時は王座剥奪の危機に陥っていたことを考えれば,開催できただけでもよしとすべきか。

横浜港を望むシーサイドロビー側2階席から下りエスカレーターを使い,客席後方からリングに向かった小堀の入場はなかなか新鮮だったが,ボン・ジョヴィの「It's My Life」をリピートさせることなく,1曲内に収めていれば,なお締まりがあった。あと,ナミビア共和国国歌を用意できていたことは評価したい。

5月のディファ有明のセミファイナルで登場したモーゼスは相手が弱すぎたこともあり,実力のすべては解りかねたが,恵まれた体格とスピードを活かし,ジャブを多用するアフリカ特有の選手に映った。
初回,想像以上にモーゼスの左が速い。前脚に体重を乗せた構えからジャブを起点に連打を繰り出す。ワンツーの繋ぎも速く,いきなりの左フックも鋭い。踏み込みが効いているため,打ち終わりのバランスも崩れない。ただし,リーチ差を活かそうというスタイルではなく,手数も多いため,小堀の打ち合いのゾーンには入る。
2回が最大のチャンスだった。小堀が得意の左フックを叩き込み,モーゼスの動きを止める。距離測定もなしに回転の速い打ち合いの中で相手を捕らえる小堀の勇敢さと左フックの当て勘は見事。ラウンド終盤には右ストレートも重ねてガッツポーズも出た。
しかしこれでモーゼスに警戒心を抱かせる。3回以降,重心を後方に移し,脚を使いながらやや長めの左ジャブを伸ばす挑戦者を捕らえることはより難しくなった。距離が縮まる左ショートフックからの攻撃は捨て,自ら仕掛けること,合わせることどちらにも使える長短打ち分けられる右アッパーを多用するスタイルにモーゼスは変更した。

ダメージは与えなくとも絶え間なく放たれるモーゼスのジャブにポイントは流れる。脚を使わない小堀は顔面への右クロスと左右フックという少ない武器だけを抱えて相打ちというよりは被弾しておいて打ち返すという危険極まりない戦い方で幾度か見せ場をつくったが,マウスピースを三度落とすなど印象も悪く,終盤は失速した。ただし9回のスリップは小堀の右が当たったタイミングだっただけにダウンだと思った。

危険を察知して早々とアウトボクシングに切り替えたモーゼスが元WBO世界Sウェルター級王者ハリー・サイモンに次ぐ,ナミビア史上2人目の世界王者となる。スピードがあり,パンチも多彩,戦術にも幅のある優れたボクサーだ。
一方で,初防衛に失敗したものの小堀のボクシングにも可能性を感じた。元来の打たれ強さに頼るところが大きいながらも世界戦でこれだけ打ち勝てる日本人ボクサーはそうはいない。エドウィン・バレロ(ベネズエラ)あたりと戦えば,相当におもしろい試合になるだろう。再起を望む…って願っていたら8日に小堀が自身のブログで現役続行を表明。年内に世界王座返り咲きを宣言しています。
by the_leaping_hare | 2009-01-09 17:05 | Box
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