「WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ」(2011年1月31日@有明コロシアム)
王者:李冽理(横浜光)●判定○同級6位:下田昭文(帝拳)
チャレンジャーが勝つには身体能力と序盤の強さを弾けさせたKO勝ちしかないかと思っていたが、そういった傾向の試合と言っていいかな。いや、結果は挑戦者の明白な判定勝ちなのだが。
戦術変更もマインドコントロールも効かず自滅癖のある挑戦者は、この王者が最も得意とするタイプではないかと思った。序盤の失点は想定内で挽回が可能。そういった展開も描けたが、試合は立ち上がりからリードした挑戦者がほぼ一方的に押し切った。つまり王者の落ち着きは、挑戦者の勢いを誘発させる結果を導いた。KOで終わらなかったのは王者の意地と、攻撃力の割には甘い挑戦者の詰めといったところだろう。おれの採点は3回がイーブン、7回のみ王者のラウンドで、108対119で下田の圧勝。
右構えの李と左構えの下田。積極的に攻めてくる下田の左ストレートの打ち終わりに李は右ストレートのカウンターを狙った。その試みは3回終了間際に一度だけ成功し、鮮やかなダウンを奪う。
立ち上がってきた時の下田の呆然とした表情からしてもう少し時間があればフィニッシュが可能だったかもしれないが、ゴングに断ち切られる。さらにこの場面の直前に李は最初のダウンを喫しており、下田の左クロスをカウンターでまともに浴びたダメージが少なからず残っていたことも痛かった。インターバルで回復した下田に4回開始直後にはあっさりペースを戻される。この回、李は故意ともとられかねないバッティングで下田の右目上をカットさせるが、流れは変えられず。以後は粘るだけのボクシングになってしまった。5回には不用意に左アッパーを打って出たところに画に描いたような左カウンターを合わされて大ダメージを負うダウン。8回にもバランスが崩れたところをスリップ気味に倒された。
李は右カウンターを打ちやすいように右拳をかなり低い位置で構えるが、下田のパンチ速度に付いていけず、これもディフェンスの破綻に繋がった。徳山昌守のような強い左ジャブでもあれば話はまったく違ってくるのだが。
下田はKOこそ逃したが、終盤も集中力を切らさず、大差判定勝ち。
入門の経緯からして帝拳の大半の選手とは異質の新王者。キャリア育成も帝拳特有のものから外れていたが、敗北の経験も含めてそれが大一番で活きたように思う。まだまだ穴も危うさも見えるが、それがまた下田昭文の魅力でもある。帝拳にベルトが増えるのは気に食わないが。暫定王者ギジェルモ・リゴンドウ(キューバ)との統一戦実現できないか。ミスター・ホンダ、お願いします。