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山猿

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The Hurt Locker

「ハート・ロッカー」(2008年・米国)
監督:キャスリン・ビグロー 脚本:マーク・ボール
第82回アカデミー賞作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響編集賞、録音賞受賞
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一般に、物語が進むにつれて緊張感を失っていく映画というのは凡作に少なくない。
だが、命を懸けて爆弾処理作業を行う緊張感たっぷりの冒頭を最高潮に、徐々に張りつめたものを感じさせなくなっていく今作においてはそれは当てはまらない。

登場人物同様、観る者の「死」への感覚を麻痺させる。
街そのものが戦場と化している2004年のバグダッド。米軍爆発物処理班の物語というおよそ非日常的な現実を舞台に、ジェレミー・レナー演じるジェームス二等軍曹率いる部隊は「死」と隣合わせの街で、一歩間違えば「死」に繋がる作業を進んでこなし、「死」への感覚を狂わせていく。主に部隊の3兵士を通じて“まともな”人間が生きていくために「死」を意識し、「死」への恐怖を覚え、「死」を怖がらなくなる様を描く。3人とも「死」への感覚が麻痺していくことは共通しながらも、それぞれの経験、置かれた立場によりその感度は異なる。そこには人間がある意味壊れていく過程が怖いくらいに絶妙に映し出されている。

同じく観る者にも映画の進行とともに「死」への“慣れ”が出てくる。
キャスリン・ビグローが伝えようとしたものは戦場の非現実的な世界ではなく、そこを経験した人間の姿だ。イラクにおけるアメリカの行為を正当化する作品だという批判もあるだろうが、それも含めてオスカーに相応しい作品だと思った。
by the_leaping_hare | 2010-03-21 05:44 | Movie
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