「WBC/WBO世界バンタム級タイトルマッチ」(2011年2月19日@マンダレイベイイベントセンター)
王者:フェルナンド・モンティエル(メキシコ)●TKO2回2分25秒○元2階級王者:ノニト・ドナイレ(比国)
早くも本年度の“Knockout of the Year”確定でしょう。
長谷川穂積(真正)を撃破して軽量級最強の地位を固めつつあった3階級王者“Cochulito”モンティエルを“The Filipino Flash”ドナイレが僅か325秒で粉砕した。2回、モンティエルに右クロスを打たせておいてテンプルへの左フックのカウンター一撃。右膝から崩れたモンティエルは仰向けに倒れて四肢を痙攣。この状態から立ってくるモンティエルも凄いが、試合を再開したラッセル・モラはちょっと無茶だった。無反応のメキシカンにドナイレが左フックを打ち込んだところでストップ。寒気を覚えるようなKO劇でドナイレがマニー・パッキャオ(比国)、亀田興毅(亀田)に続く東洋人3人目の3階級制覇を達成した。
なお、使用グローブはモンティエルがレイジェス、ドナイレがエバーラスト。モンティエルのシューズはミズノだった。
両者とも1発目から強いパンチを当てることができるカウンターの名手。左フックを得意としているところも共通するが、タイプは少々異なる。タイミングでカウンターをとるモンティエルに対し、ドナイレはスピードでカウンターを合わせてくる。目の良さとパンチのスピードに絶対の自信があるからフェイントをさほど必要とせず、逆にフェイントに惑わされることもない。熟練の技巧でスピード差をなきものとする今回のような相手にも自在にカウンターを叩き込める。
初回に左ボディを見せておいて、2回に顔面への左フック一閃。そこまでそれほど出していないモンティエルの右クロスにカウンターを合わせてしまう反応速度とその破壊力。これは超人的とでも言うしかない。
偉大なる先人マニー・パッキャオが開拓したフィリピンからのアメリカンドリーム。その栄光への道を着実に歩むドナイレ。この勝利で実績、インパクトでもパッキャオが03年にマルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)を倒した段階を超えたか。
長距離から飛んでくる右ストレートと左フックが手に負えないため、ドナイレを攻略するには接近戦以外思い当たらないが、それも至難の業。ガードを固めて頭を下げて突っ込んだところで左アッパーを直撃されて終わりだろう。
昨年12月26日、さいたまSAでの「亀田祭り」を現地で観戦したドナイレ。ぜひとも日本のリングに上がってほしい。長谷川穂積、西岡利晃、下田昭文、亀田興毅と対戦相手としての“有資格者”は4人いる。日本選手の勝機はとても見出せないが、それでも見たい“世界”がある。